3-3-9. クラスメンバアクセス演算子のオーバーロード

公開日： 18:09 3. オブジェクト指向編/3-3. オーバーロード/3-3-9. クラスメンバアクセス演算子のオーバーロード

クラスメンバアクセス演算子(->)は少し変則的ですがオーバーロードすることが可能です。クラス型に"ポインタのような"振る舞いを与えます。->演算子はメンバ関数である必要があります。使う場合には、その戻り値の型は反映したいクラスのポインタまたはオブジェクトでなければいけません。

->演算子はスマートポインタを実装するためによくポインタ間接参照演算子*と一緒に使わます。スマートポインタはこのポインタを通してオブジェクトにアクセスしたとき、自動オブジェクトの削除、ポインタの破壊、またはポインタが他のオブジェクトを示すのに使われたりなど、他のタスクを実行中でなければ普通のポインタのように振るまいます。

->演算子は次のように、単項接尾辞演算子として定義可能です。

class Ptr{
   //...
   X * operator->();
};

クラスPtrのオブジェクトはポインタの使われ方と非常に似た方法でクラスXのメンバへのアクセスするのに使われます。

void f(Ptr p )
{
   p->m = 10 ; // (p.operator->())->m = 10
}

構文p->mは(p.operator->())->m と解釈されます。同じ概念を用いて、次の例でクラスアクセス演算子->がどのようにオーバーロードされるかを示します。

#include <iostream>
#include <vector>
using namespace std;

// 実際のクラスで考えてみましょう
class Obj {
   static int i, j;
public:
   void f() const { cout << i++ << endl; }
   void g() const { cout << j++ << endl; }
};

// 静的メンバの定義
int Obj::i = 10;
int Obj::j = 12;

// 上のクラスのコンテナを実装
class ObjContainer {
   vector<Obj*> a;
public:
   void add(Obj* obj)
   { 
      a.push_back(obj);  // vectorの標準関数の呼び出し
   }
   friend class SmartPointer;
};

// クラスObjのメンバへアクセスするスマートポインタの実装
class SmartPointer {
   ObjContainer oc;
   int index;
public:
   SmartPointer(ObjContainer& objc)
   { 
       oc = objc;
       index = 0;
   }
   // 戻り値はリストの最後を指す
   bool operator++() // 接頭辞バージョン
   { 
     if(index >= oc.a.size()) return false;
     if(oc.a[++index] == 0) return false;
     return true;
   }
   bool operator++(int) // 接尾辞バージョン
   { 
      return operator++();
   }
   // ->演算子のオーバーロード
   Obj* operator->() const 
   {
     if(!oc.a[index])
     {
        cout << "Zero value";
        return (Obj*)0;
     }
     return oc.a[index];
   }
};

int main() {
   const int sz = 10;
   Obj o[sz];
   ObjContainer oc;
   for(int i = 0; i < sz; i++)
   {
       oc.add(&o[i]);
   }
   SmartPointer sp(oc); // イテレータの作成
   do {
      sp->f(); // スマートポインタの呼び出し
      sp->g();
   } while(sp++);
   return 0;
}

上のコードをコンパイルし実行すると、次のような結果が得られます。
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